2026年6月21日 日曜日
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研究· 約5

大学生の36%がAIコピペ経験──だが本当の数字はもっと高い

独協大学の全国調査で大学生535人中36.3%がAI翻訳のコピペ提出経験ありと回答。だが自己申告調査には社会的望ましさバイアスが構造的にかかる。実態は5〜7割の可能性がある。

独協大学の木村佐千子教授による全国調査で、大学生の36.3%が「AIで生成した翻訳文をそのまま外国語課題に提出した経験がある」と回答した。共同通信が2026年6月20日に報じた。

  1. 全国の大学生535人を対象とした調査(2025年8月実施)で、36.3%がAI翻訳コピペ提出の経験ありと回答
  2. 理由の最多は「時間がない・忙しい」(28.9%)、次いで「禁止されていない」(16.5%)
  3. ただし自己申告調査には社会的望ましさバイアスがかかるため、実際の利用率はこの数字を大幅に上回る可能性がある

調査の概要

項目 内容
実施者 独協大学・木村佐千子教授
対象 全国の大学生535人
実施時期 2025年8月
質問 「AIで生成した翻訳文をそのまま使い、外国語授業の課題を提出した経験があるか」
「ある」 194人(36.3%)
「ない」 341人(63.7%)

コピペ提出の理由として最も多かったのは「時間がない・忙しい」(56人、28.9%)。次いで「禁止されていない」(32人、16.5%)、「自力でできない」(24人、12.4%)だった。

木村教授は「AIを有効活用すれば語学力向上の可能性もあるが、コピペでは絶対に身に付かない」と指摘している。

36%は「下限値」である理由

この36.3%という数字を額面通りに受け取るべきではない。自己申告調査には社会的望ましさバイアス(social desirability bias)が構造的にかかるためだ。

社会的望ましさバイアスとは、回答者が自分を社会的に望ましい方向に見せようとする傾向のこと。「不正をしたか」という質問に対して正直に「はい」と答えるインセンティブは低い。匿名調査であっても、この傾向は完全には消えない。

学術不正の自己申告研究の先駆者であるDonald McCabeらの一連の研究(Rutgers大学、1990年代〜2000年代)は、自己申告による不正率が実際の発生率を相当に下回る傾向を繰り返し報告している。

「コピペ」の定義のグレーゾーン

さらに重要なのは、何をもって「コピペ」とするかの境界が曖昧な点だ。

  • DeepLやChatGPTの出力を「参考にして」一部手直しした場合、回答者は「コピペではない」と分類できる
  • AI出力を下敷きにして語順や表現を変えた場合、本人の認識では「自分で書いた」になりうる
  • 部分的にAIを使い、部分的に自力で書いた場合、「コピペ経験あり」に入れるかは回答者の解釈次第

「禁止されていない」と答えた16.5%の存在は示唆的だ。この層は行為自体をグレーゾーンと認識しており、質問の聞かれ方次第で「ない」側に回る余地がある。

大学生の体感

筆者は現役の大学生だが、体感としては7割程度がAI翻訳を何らかの形で課題に使っていると見ている。「そのまま」ではなく「手を加えて」使っている層を含めれば、AI未使用の学生のほうが少数派というのが教室の実感だ。

もちろん個人の体感は統計ではない。だが、36%という数字が教室の空気とかけ離れている点は指摘しておきたい。

問題の本質は「コピペかどうか」ではない

この議論で見落とされがちなのは、AIを使うこと自体が問題なのではなく、学習プロセスが消失することが問題だという点だ。

外国語の課題は、翻訳結果を提出するためにあるのではない。翻訳する過程で語彙や文法を習得するためにある。AIに丸投げした場合、成果物は完成するが、学習は発生しない。

木村教授の「コピペでは絶対に身に付かない」という指摘は、この構造を端的に言い表している。

一方で、AIを「答え合わせ」や「自分の訳との比較」に使う場合は、むしろ学習効果を高める可能性がある。問題は道具ではなく使い方にある。

大学側の対応の難しさ

現時点で多くの大学はAI利用に関する明確なガイドラインを策定しきれていない。「禁止されていない」が理由の2位に入っていることは、ルールの不在が利用を後押ししている現状を示している。

ただし、全面禁止は現実的ではない。社会に出ればAIツールの利用は当たり前になる。教育機関に求められるのは、禁止ではなく「AIを使いながら学習効果を担保する課題設計」への転換だろう。

出典・但し書き

  • 本記事の一次情報源は共同通信の報道(2026年6月20日配信)。木村教授の調査論文そのものは本記事執筆時点で未確認であり、調査方法の詳細(オンライン/対面、選択式/自由記述等)は報道の記述に基づく
  • McCabeらの研究への言及は一般的な傾向の参照であり、本調査に直接適用した定量分析ではない
  • 「7割」という体感は筆者個人の観測であり、統計的根拠はない
  • 本記事は2026年6月20日時点の情報に基づく
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