AI画像生成と著作権──日本の法律はどうなっている?【2026年時点】
日本の著作権法第30条の4はAI学習目的の著作物利用を原則許容するが、生成段階では通常の侵害判断が適用される。2026年6月時点で国内のAI著作権判例はゼロ。文化庁ガイドラインと日経・朝日のPerplexity訴訟を含む最新動向を整理した。
3行まとめ
- 著作権法第30条の4により、AI学習のための著作物利用は「非享受目的」として原則許容される。ただし著作権者の利益を不当に害する場合は適用除外
- AI生成物の出力段階では通常の著作権法が適用され、「類似性」と「依拠性」の両方が認められれば侵害となる
- 2026年6月時点で日本国内のAI著作権に関する判例はまだ蓄積されていない。日経・朝日がPerplexity AIを提訴(各22億円の損害賠償請求)した訴訟が注目される
著作権法第30条の4とは何か
日本の著作権法第30条の4は、2018年の改正で新設された規定だ。「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない」利用(非享受目的)であれば、著作権者の許諾なく著作物を利用できるとしている。
AI画像生成においては、大量の画像データを学習に使う段階がこの条文の適用対象となる。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日とりまとめ)によると、情報解析のための著作物利用は原則として30条の4の対象だ。
但し書き──「不当に害する」場合は適用外
30条の4には但し書きがある。「著作物の種類・用途、利用態様に照らし著作権者の利益を不当に害する場合」は適用除外となる。
文化庁のガイドラインから読み取れる「不当に害する」ケースの例は以下の通り。
- 情報解析用に販売されているデータベースの無断利用
- 享受目的が併存する場合(特定の著作物をそのまま出力させる意図がある学習)
- 特定の著作者の商業市場を代替する出力を意図的に生成する場合
AI生成物の著作権──2段階で考える
文化庁は「学習段階」と「生成・利用段階」を分けて整理している。
学習段階
30条の4により原則許容。ただし上記の但し書きに該当する場合は違法となりうる。
生成・利用段階
通常の著作権侵害判断が適用される。具体的には、AI生成物が既存著作物と「類似性」があり、かつ「依拠性」(その著作物に基づいて作られたこと)が認められる場合、著作権侵害となる。
AI単独で生成した画像に著作権はあるか
文化庁の見解では、人間の創作的寄与がないAI単独の生成物は、原則として著作物にならない(著作権が発生しない)。プロンプトの工夫や生成後の加工など、人間の創作的寄与が認められる場合には著作権が発生する可能性がある。
2026年の動き
AI推進法の成立
2025年5月28日に「AI関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」が国会で可決・成立した。White & Caseの分析によると、この法律はイノベーション重視のアプローチをとり、罰則規定は設けていない。著作権に関する直接的な規定は含まれていないが、AI政策の上位枠組みとして著作権の議論にも影響を与える可能性がある。
日経・朝日によるPerplexity AI訴訟
TipRanksの報道によると、日本経済新聞社と朝日新聞社がPerplexity AIに対し、東京地裁に著作権侵害訴訟を提起した。損害賠償請求額は各22億円(約1,500万ドル)。ニュース記事の無断複製・保存・再現を主張しており、サイト側のクローリング制限コードを無視したと訴えている。
この訴訟はAI画像生成とは直接関係しないが、AI企業による日本のコンテンツ利用の法的判断に影響を与える可能性がある。
文化審議会の動き
文化庁公式サイトによると、2025年9月11日に第25期文化審議会の著作権分科会政策小委員会で「法制度に関するワーキングチーム」の第1回が開催されている。AI著作権に関する法制度の検討が進んでいることを示している。
クリエイター・利用者が気をつけるべきこと
文化庁のチェックリスト(2024年7月31日公開)を踏まえた注意点は以下の通り。
- AI生成画像の商用利用: 既存著作物に類似する生成物を商用利用する場合、著作権侵害リスクがある。特定のアーティストやキャラクターの名前をプロンプトに指定して生成する行為はリスクが高い
- 学習データの選定: 30条の4が適用されるかどうかは利用態様による。著作権者がAI学習禁止を明示している場合の扱いは法的に確定していない
- 生成物の権利: 人間の創作的寄与がない純粋なAI生成物は著作権で保護されない可能性が高い。自分の生成物を他者に無断利用されても著作権侵害を主張しにくい
正直に書くと
- 本記事は法律の解説であり、法的助言ではない。具体的なケースの判断は弁護士への相談を推奨する
- 2026年6月時点で、日本国内にはAI画像生成に関する判例が蓄積されていない。文化庁自身がこの点を認めており、30条の4の具体的な適用範囲は今後の裁判で明らかになる部分が大きい
- 30条の4をめぐっては、権利者側(大規模商用学習への適用に反対)と開発者側(法的安定性を主張)で見解が分かれている
- 文化庁の「AIと著作権に関する考え方」は2024年3月のとりまとめが最新で、2026年6月時点での更新版は文化庁サイト上で確認できていない
出典・但し書き
本記事は文化庁公式サイト、Global Law Experts、White & Caseの法律分析を主な情報源とした。法律の解釈は専門家により異なる場合がある。2026年6月19日時点の情報に基づく。
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