2026年6月12日 金曜日
AI時短ラボ
研究· 約7

数百万件の実ログが示す、海外のAI活用のリアル──OpenAIとAnthropicの一次データを読み比べる

海外の人は実際、AIを何に使っているのか。アンケートではなく「実際の会話ログ」を分析した一次データが2つある。OpenAIの研究(NBER論文)とAnthropic Economic Indexだ。世界の成人の約10%がChatGPTを使い、非仕事用途が7割超に拡大。一方Claudeはコーディングが35%を占めつつ、個人利用が急増中。2つのデータから海外のAI活用の実態を整理する。

3行まとめ

  1. OpenAI研究者らのNBER論文によると、ChatGPTは2025年7月までに**世界の成人人口の約10%**が利用。メッセージ全体に占める非仕事用途は調査期間中に53%から70%超へ拡大した
  2. ChatGPTで最も多い用途は「実用的なガイダンス」「情報探し」「文章作成」の3つで、合計約8割。一方Anthropicの2026年2月データでは、Claudeは**コーディング関連が会話の35%**と最多
  3. Claudeでも個人利用の割合が35%から42%へ増加し、上位10タスクへの集中度は低下。「みんなが同じ使い方をする」段階から「用途がばらける」段階へ移行しつつある

「海外の人は、実際AIを何に使っているのか」。この問いに答えるデータには2種類ある。アンケートやフォーラム投稿など自己申告ベースの調査と、AI企業自身が匿名化した上で分析する実際の会話ログだ。

自己申告調査(HBRの年次調査など)では「セラピー・話し相手」が1位とされる一方、実ログのデータは少し違う景色を見せる。本記事では、実ログ系の一次ソース2つ──OpenAI研究者らによるNBER論文「How People Use ChatGPT」と、Anthropicの「Economic Index」2026年3月レポート──を読み比べる。

ChatGPT:世界の成人の約10%が利用、非仕事用途が7割超に

OpenAIの研究者らがハーバード大の経済学者らと共同で発表したNBER論文(Working Paper 34255)は、ChatGPTの実際のメッセージを匿名化して分析したものだ。主な発見は次のとおり。

  • 2022年11月のリリースから2025年7月までに、**世界の成人人口の約10%**がChatGPTを利用するようになった
  • 非仕事関連のメッセージが調査期間中に53%から70%超へ増加。仕事利用も増えてはいるが、伸び率では非仕事利用が上回る
  • 最も多い用途は「実用的なガイダンス(Practical Guidance)」「情報探し(Seeking Information)」「文章作成(Writing)」の3つで、合計で会話の約8割を占める
  • プログラミングや自己表現(感情の吐き出しなど)の用途は、シェアとしては相対的に小さい
  • 初期ユーザーは男性に偏っていたが、その後ジェンダーギャップは大幅に縮小。低所得国での利用の伸びが特に大きい

注目したいのは4点目だ。自己申告ベースの調査では「セラピー・話し相手」が上位に来るのに対し、世界の成人の約10%が使う規模の実ログでは自己表現系の用途はシェアとして小さいと報告されている。「声の大きい用途」と「量として多い用途」は別物、ということだ。

Claude:コーディング35%が最多、ただし個人利用が急伸

一方のAnthropicは、「Economic Index」として自社プラットフォームの利用データを継続的に公開している。2026年3月のレポートは、2026年2月5日〜12日のClaude.aiとAPIそれぞれ100万会話をサンプリングして分析したものだ。

  • 最も多い用途は引き続きコーディングで、コンピュータ・数学系職種に紐づくタスクが**Claude.aiの会話の35%**を占める
  • ただし個人利用(非仕事利用)の割合は、前回調査(2025年11月)の35%から42%へ増加
  • Claude.aiでは上位10タスクが全トラフィックに占める割合が24%から19%へ低下。利用がより多様なタスクに分散した
  • 逆にAPI(企業がシステムに組み込む利用)では、上位10タスクの集中度が2025年8月時点の28%から33%へ上昇(前回2025年11月調査との比較ではほぼ横ばい)。より長い期間で見ると、自動化の定番用途が固まりつつある
  • 職業ベースでは、約49%の職業で、その職業を構成するタスクの4分の1以上がClaudeで実行された実績がある

ChatGPTが「一般層の生活インフラ」に向かうのに対し、Claudeはコーディング中心のヘビーユーザー層が厚い──という2社のユーザー層の違いがそのまま数字に出ている。それでもClaude側ですら個人利用が7ポイント伸びている点は、AI活用の重心が仕事から生活へ広がる世界的な流れと整合する。

2つのデータが重なる場所

別々の会社の別々のデータだが、重なる発見が2つある。

1つ目は「非仕事用途の拡大」。ChatGPTでは非仕事メッセージが70%超、Claudeでも個人利用が42%まで伸びた。海外でAIは「仕事の効率化ツール」の枠を出て、調べ物・文章・生活の相談ごとまで含む日常のツールになりつつある。

2つ目は「個人利用の多様化と、企業利用の定番化」が同時に起きていること。Claude.aiでは用途の集中度が下がり(19%)、APIでは上がった(33%)。個人は思い思いの使い方を開拓し、企業は効果の出る用途に絞って自動化する──という二極化だ。

なお、ここからは推測になるが、自己申告調査で「セラピー」が1位になり実ログでは小さく出る理由は、(1) 印象に残る使い方ほど語られやすい、(2) ログ分析は1メッセージ単位でカウントするため日常的な調べ物が量で勝つ──の2つが効いているとみられる。どちらが「正しい」というより、測り方が違う。

日本にいる私たちへの示唆

数字から言えることは2つある。

第一に、海外で量として「流行っている」AI活用は、派手なものではない。実用ガイダンス・情報探し・文章作成で約8割だ。SNSで話題になる尖った活用例より先に、この3つを日常に組み込むだけで世界の多数派と同じ土俵に立てる。

第二に、Claudeのデータが示す「個人は多様化・企業は定番化」の構図は、日本の個人にとってはチャンスでもある。上位10タスクの集中度が下がっているということは、まだ「定番の使い方」が固まりきっていないということだ。自分の仕事に合った使い方を今のうちに開拓した人が、定番が固まったあとの「教える側」に回れる。

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