海外の人はAIを何に使っているのか──HBR 2026年版調査、1位は2年連続の「セラピー・話し相手」、急上昇は「おふざけ」
Harvard Business Reviewが毎年恒例の「How People Are Really Using AI」2026年版を公開。1位はセラピー・コンパニオンシップ、2位トラブルシューティング、3位には「Fun and nonsense(おふざけ)」が浮上した。仕事効率化よりも感情・生活密着の用途が上位を占める実態を、一次ソースとあわせて整理する。
3行まとめ
- HBRが2026年6月、AI活用法トップ100の年次調査(第3版、Marc Zao-Sanders氏)を公開。1位は今年も**「セラピー・コンパニオンシップ(話し相手)」**だった
- 2位はトラブルシューティング、3位に「Fun and nonsense(おふざけ・暇つぶし)」が入り、上位は仕事効率化よりも感情・娯楽・生活密着の用途が目立つ
- 別調査(Sentio、米国499人)では、メンタルヘルスの課題を抱えるAI利用者の48.7%がLLMを心の支えに使い、人間のセラピー経験もある回答者の約75%が「人間のセラピーと同等以上」と回答した
「海外の人は、実際AIを何に使っているのか」。この問いに毎年答えてきたのが、Harvard Business Review(HBR)に掲載されるMarc Zao-Sanders氏の年次調査「How People Are Really Using AI」だ。2026年6月1日に**第3版(2026年版)**が公開された。
2026年版のトップ20
HBR本文は有料記事のため、ランキングの詳細はOfficeChaiの報道(2026年6月8日)で確認した。上位20は次のとおり。
- セラピー・コンパニオンシップ(Therapy/companionship)
- トラブルシューティング(Troubleshooting)
- おふざけ・ナンセンス(Fun and nonsense)
- 二次創作・ストーリーテリング(Fan fiction and storytelling)
- ソフトウェアの技術的な使い方(Technical use of software)
- 自律エージェント運用(Autonomous agentic operations)
- 人間関係の相談(Relationship advice)
- 仕事の相棒(Work buddy)
- 占星術・タロット(Astrology and tarot readings)
- 一般的なアドバイス(General advice)
- フェイクリアリティ番組ごっこ(Fake reality TV)
- 医療アドバイス(Medical advice)
- 意思決定の強化(Enhanced decision-making)
- 生活の整理(Organizing my life)
- 画像生成(Generating relevant images)
- 健康的な生活(Healthier living)
- 恋愛の悩み(Navigating love lives)
- 特定の調べ物(Specific search)
- 創作文章(Creative writing)
- 文章の編集(Editing text)
100件の活用法は「個人・仕事のサポート」「コンテンツ作成・編集」「学習・教育」「技術支援・トラブルシューティング」「創造・娯楽」「リサーチ・分析・意思決定」の6テーマに分類されている。
2025年版から何が変わったか
2025年版のトップ3は「セラピー・コンパニオンシップ」「生活の整理」「人生の目的探し」だった(HBR 2025年4月記事ベース)。2026年版と比べると、
- 1位の「セラピー・話し相手」は不動
- 2025年に2位だった「生活の整理」は、上記リストでは14位まで後退
- 「人生の目的探し」は上位20に見当たらない
- 代わりに「おふざけ」(3位)、「占星術・タロット」(9位)、「フェイクリアリティ番組ごっこ」(11位)など、娯楽・遊び系が上位に浮上
- 「自律エージェント運用」が6位に入り、エージェント活用が個人レベルにも浸透し始めた
なお、この調査はアンケートではない。2025年版レポート本文によれば、手法はRedditなどの公開投稿を専門家がキュレーションする定性分析で、各活用法に順位・前年順位・普及度スコア(0-10)・影響度スコア(0-10)のメタデータを付けて整理している。2025年版の時点で著者は「技術・生産性中心の用途から、個人のウェルビーイング・生活の整理・実存的な探索へ移行が鮮明」と総括していた。
HBRの2026年版記事の冒頭では、ChatGPTの週間アクティブユーザーが9億人に到達し、Google Geminiの月間アクティブユーザーが7億5,000万人を超え、OpenAIの評価額が直近の資金調達で8,520億ドルに達したことにも触れられている。
「AIセラピー」はどれくらい本気で使われているのか
1位の「セラピー・話し相手」を裏付けるデータもある。米Sentio大学(結婚・家族療法の教育機関)が2025年2月に実施した調査(Prolific経由、メンタルヘルスの課題を抱え、LLM利用経験のある米国成人499人)では、
- AI利用者のうち48.7%がLLMをメンタルヘルスの支えに使用
- 63%が「改善を実感した」と回答
- 人間のセラピー経験者のうち、**約75%が「LLMは人間のセラピーと同等かそれ以上」**と評価
- 一方で9%は「有害または不適切な応答を受けた」と回答
サンプルは約500人の初期調査で、LLM利用経験者に限定した選抜バイアスの可能性も調査側が明記している。「AIセラピーが人間を超えた」と読むのは早い。ただ、英語圏で「AIに悩みを話す」が特殊な使い方ではなくなっている傾向は、HBRランキングと整合する。
この調査の読み方の注意点
- データソースは英語圏のReddit中心。世界全体や日本のユーザー像をそのまま代表するものではない
- 投稿のキュレーションという定性手法のため、利用時間や人数のシェアを示す定量調査ではない
- 2026年版の順位はHBR有料記事に基づく報道(OfficeChai)経由の確認であり、当サイトはHBR本文の全文は未読
日本にいる私たちへの示唆
日本では「AI活用=仕事効率化」の文脈で語られがちだが、英語圏の実態は感情・生活・遊びが主戦場になっている。ここからは推測になるが、(1) 毎日使う習慣は娯楽・相談から生まれやすく、仕事活用はその後についてくる、(2) 「話し相手としてのAI」の品質(記憶・声・人格設定)が次の競争軸になる、(3) 日本でも雑談・相談用途が統計に表れてくる──と読める。
「正しい使い方」を待つより、まず生活の中で日常的に触ること。海外のトップ100が示しているのは、結局そういう順序だ。
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