Sakana AIが「RSI Lab」設立──AIがAI自身を改良する専門研究組織
東京拠点のSakana AIが、AIによるAI開発プロセスの再設計を専門とする研究グループ「RSI Lab」の設立を発表。LLM-Squared、Darwin Gödel Machine、The AI Scientist(Nature掲載)など既存成果を束ね、再帰的自己改善(RSI)の実用化を目指す。計算規模でなく効率とエレガンスで勝負する日本発のアプローチ。
東京拠点のAI企業Sakana AIが、再帰的自己改善(Recursive Self-Improvement, RSI)に特化した専門研究グループ「RSI Lab」の設立を発表した。「AIがAI自身の開発プロセスを再設計する」ことを目標に掲げている。
- AIがAIの訓練方法・アーキテクチャ・コードを自律的に改善するループの構築が目的
- 2024年以降の6つの研究成果(LLM-Squared、Darwin Gödel Machine、The AI Scientistなど)を統合
- 計算リソースの規模でなく「エレガンス、適応性、自律性」で勝負する方針を明示
何が起きたか
Sakana AIはRSI Labの設立にあたり、同社がこれまでに発表してきた6つの研究プロジェクトを「RSIへの道筋」として位置付けた。単一の新発表というより、散らばっていた研究群を1つの旗の下に束ねた形になる。
同社は「日本が計算リソースの規模ではなく、エレガンス、適応性、自律性を追求することで、AIの最前線での指導的地位を取り戻すべき」と主張している。巨大GPUクラスタの物量勝負ではなく、少ない計算資源で高い成果を出すアプローチが一貫したテーマになっている。
これまでの研究成果
RSI Labが束ねる6つの主要プロジェクトは以下の通り。すべてSakana AI公式発表に基づく。
LLM-Squared(2024年) -- オックスフォード・ケンブリッジとの共同研究。LLMが「LLMの訓練方法」を自動で発明する進化ループ。成果物としてDiscoPOPという選好最適化アルゴリズムを生成した。
Darwin Gödel Machine(2025年) -- ブリティッシュコロンビア大学との共同研究。エージェントが自分自身のコードを書き換えて性能を改善する仕組み。ソフトウェアエンジニアリング性能でベースラインから30ポイント以上の改善、性能2倍以上を報告している(Sakana AI発表値)。
ShinkaEvolve(2025年) -- オープンソースの最適化フレームワーク。適応的サンプリングと新規性フィルタリングを使い、わずか150サンプルで複雑な最適化問題を解決したとしている。新規のロードバランシング損失関数も生成した。
ALE-Agent(2025年) -- AtCoder Heuristic Contest 058で804人中1位を獲得。大規模推論時間スケーリングと自己学習メカニズムを活用し、試行錯誤の失敗から洞察を自律的に抽出する。
Digital Red Queen(2026年) -- MITとの共同研究。チューリング完全なサンドボックス「Core War」の中で、LLMが書いたコード同士を対抗進化させる。進化的軍拡競争による性能向上を検証している。
The AI Scientist(2024-2026年) -- 完全自動化された科学発見システム。アイデア生成から実験実施、論文執筆、ピアレビューまでを自動化する。2026年3月26日にNature誌に掲載された。
安全性についての言及
Sakana AIは2年の開発経験から、「進化ループの分布外ドリフト」「ベンチマーク通過後の実装失敗」「制約回避」といった失敗パターンを経験していると明かしている。これらを「エッジケースではなく中心的工学問題」として扱う方針を示した。
「責任あるRSIはケーパビリティの制約ではなく、ケーパビリティを持続可能にする」という表現で、安全性と能力向上を対立軸ではなく同じ方向として位置付けている。負の結果を含む開放的な出版と、検証可能なセーフガードの統合を設計方針に掲げている。
4段階のロードマップ
RSI Labは以下の4段階の軌道を描いている。
- Agent-Native Models -- エージェント用途向けの認知基盤の構築
- The AI Scientist -- エンドツーエンドの自動研究の展開
- Recursive Self-Improvement -- AIが自らのアーキテクチャのコードを書き換え・検証・自動アップグレード
- Democratized AI -- 計算効率的なRSIによるAIの民主化
どう読むか
RSI(再帰的自己改善)は、Anthropicも2026年5月の公式エッセイで言及しているテーマ。Anthropicは「RSIの証拠はまだ見ていないが、今後数年で変わる可能性がある」と慎重な立場を取っている。
一方でSakana AIは、RSIを社名の由来(進化=自然淘汰)から一貫して研究の軸に据えており、今回のRSI Lab設立はその延長線上にある。計算規模で米国の巨大企業と競わず、効率とエレガンスで差別化するというポジショニングは、Fuguのマルチエージェント戦略とも共通している。
ベンチマーク数値はいずれもSakana AI自身の発表に基づく。独立した第三者検証の結果は、本記事執筆時点では確認できていない(The AI ScientistのNature掲載を除く)。
本記事はSakana AI公式発表ページ(sakana.ai/rsi-lab/)を一次ソースとして構成しています。ベンチマーク数値・性能改善の数字はすべてSakana AIの発表値であり、独立検証の有無は各項目に記載の通りです。
📎 出典・一次ソース
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