2026年6月26日 金曜日
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ノーベル賞受賞者ジョン・ジャンパー、Google DeepMindを退社しAnthropicへ――1週間で主要研究者4人流出、Alphabet時価総額2,250億ドル消失

AlphaFold共同開発者でノーベル化学賞受賞者のジョン・ジャンパーが約9年在籍したGoogle DeepMindを離れ、Anthropicへの参加を表明した。Transformer論文共著者ノーム・シャジーアのOpenAI移籍と合わせ、6日間で主要研究者4人がGoogleから流出。Alphabet株は6月22日に約5%下落し時価総額約2,250億ドルが消失した。

2026年6月19日、Google DeepMind副社長のジョン・ジャンパー(John Jumper)氏が約9年間在籍した同社を退社し、AI企業Anthropicに参加すると本人がXで発表した。ジャンパー氏はタンパク質構造予測AI「AlphaFold」の共同開発者であり、2024年のノーベル化学賞をGoogle DeepMind CEOデミス・ハサビス氏と共同受賞した人物である。その前日6月18日には、Transformer論文「Attention Is All You Need」の共著者でGeminiモデル共同リードのノーム・シャジーア(Noam Shazeer)氏がOpenAIへの移籍を発表しており、CNBCによるとGoogleは連続2日間で最重要級の研究者2人を失った。

6日間で4人の主要研究者が流出

人材流出はこの2人にとどまらなかった。Bloombergが6月24日に報じたところによると、Google DeepMindのAI研究者ヨナス・アドラー(Jonas Adler)氏とアレクサンダー・プリッツェル(Alexander Pritzel)氏もAnthropicへの移籍を計画している。アドラー氏はGoogleのAIコーディング開発に携わり、プリッツェル氏はモデルの事前学習(pretraining)を担当していた。TechCrunchによると、両氏はジャンパー氏とともにAlphaFold研究にも貢献した人物である。

6月18日から24日までの6日間で、Google DeepMindから主要研究者4人が競合2社に流出したことになる。

退社した4人の経歴

研究者 主な業績 移籍先
ノーム・シャジーア Transformer論文共著者、Gemini共同リード OpenAI
ジョン・ジャンパー AlphaFold共同開発、2024年ノーベル化学賞 Anthropic
ヨナス・アドラー AIコーディング開発、AlphaFold研究 Anthropic
アレクサンダー・プリッツェル 事前学習研究、AlphaFold研究 Anthropic

ジャンパー氏は何を語ったか

ジャンパー氏はXへの投稿で「約9年間を経て、Google DeepMindを離れAnthropicに参加することを決めました(充電期間を挟んだ後に)」と述べた。ハサビス氏が博士課程修了からわずか6カ月でAlphaFoldチームを任せてくれたことへの感謝も記している。

TechCrunchの報道によると、ハサビス氏はXで「extraordinary partnership(並外れた連携)」と呼んでジャンパー氏に謝意を示し、AlphaFoldが「世界を変えた」と述べた。

一方シャジーア氏は「OpenAIの卓越したチームと働くことを楽しみにしている」とXに投稿したAxiosによると、Googleは2024年にシャジーア氏のスタートアップCharacter.AIを27億ドルで買収して同氏を呼び戻した経緯があり、2年足らずで再び失うことになった。

Anthropicにとっての意味――科学AI路線の本格化

ジャンパー氏の採用は、Anthropicの戦略的方向性を示す動きである。

Anthropicの公式発表によると、同社は2026年2月にAllen InstituteおよびHoward Hughes Medical Institute(HHMI)と研究提携を結び、生命科学分野でのAIエージェント開発を進めている。Fortuneの報道では、Allen Instituteとはマルチモーダルデータ解析のためのマルチエージェントAIシステム開発を、HHMIとは計算タンパク質設計から認知の神経メカニズムまで幅広いプロジェクトで協力するとされている。

さらにEnterprise DNAの報道によると、Anthropicは2026年を通じてウェットラボ(物理的な生物実験施設)の開設や生物学ワークフロー専用AIエージェントの研究論文発表を進めてきた。ノーベル賞級の科学者を迎えることで、チャットAIの会社という位置づけから「AIで科学を前進させる組織」への転換を図る意図が読み取れる。

2026年6月26日時点で、Anthropicはジャンパー氏の具体的な役職や担当領域を公表していない。同社は6月30日に科学に焦点を当てたイベントを予定しており、詳細はそこで発表される可能性がある。

Alphabet株への影響――時価総額約2,250億ドル消失

CNBCによると、Alphabet(GOOGL)の株価は6月22日に約5%下落し、1年以上ぶりの最大の下げ幅を記録した。Startup Fortuneの報道では、時価総額の消失は約2,500億ドルに達したとする推計もある(報道元によって2,250億ドルから2,500億ドルまで幅がある)。

株価下落の要因は人材流出だけではない。Seeking Alphaの報道によると、AI計算インフラへの設備投資額が2026年通期で1,800億〜1,900億ドルに達する見通しであること、また847.5億ドル規模の株式追加発行にともなう希薄化への懸念も重なった。

Googleへの構造的影響――Gemini開発とGemini 3.5 Pro遅延

Startup Fortuneの報道によると、GoogleはGemini 3.5 Proの一般提供開始を7月に延期した。同社はコーディング性能、トークン効率、長時間タスク処理の改善のためとしているが、人材流出と重なるタイミングが市場の懸念を強めている。

Fortuneが6月23日に報じた記事では、Google DeepMindがAI開発の最前線に留まれるかどうか疑問を呈する声が出始めていると指摘されている。

背景――IPO前夜のスタートアップが持つ採用力

TechCrunchによると、AnthropicとOpenAIが上場(IPO)を控えている時期であることが人材引き抜きの一因とされている。IPO前に参加することで大型のストックオプションを得られる可能性があり、大手テック企業の待遇でも引き留めが難しい構造がある。

但し書き

  • ジャンパー氏のAnthropicでの具体的な役職・担当領域は2026年6月26日時点で未発表である。6月30日のAnthropicの科学イベントで詳細が明かされる可能性がある
  • アドラー氏とプリッツェル氏の移籍はBloombergの報道に基づくもので、2026年6月26日時点で両氏およびAnthropicからの公式確認は確認できていない
  • Alphabet株価下落の時価総額消失額は報道元によって2,250億ドルから2,500億ドルまで幅がある。株価下落は人材流出だけでなく、設備投資額の増大や株式発行による希薄化懸念など複合要因による
  • Gemini 3.5 Proの延期と人材流出の因果関係はGoogleから公式に説明されていない
  • 人材流出がGoogle DeepMindの研究開発能力に与える長期的影響は、現時点では評価が難しい。同社は依然として大規模な研究チームとインフラを有している
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